治療について
大腸憩室出血の内視鏡止血術について
大腸憩室とは、大腸の壁にできた小さな袋状のくぼみのことです。通常は無症状ですが、内部の血管が破れると突然の大量出血(大腸憩室出血)を引き起こすことがあります。大腸憩室出血は、腹痛などの自覚症状を伴わずに大量の血便が生じることが特徴です。出血の多くは自然に止まりますが、出血が続く場合や再出血を繰り返す場合には、内視鏡による確実な止血術が必要となります。内視鏡止血術は、開腹手術に比べて体への負担が少ない、低侵襲な治療法です。
治療の適応(対象となる方)
大腸憩室出血の内視鏡止血術は、以下のような症状や状態を認める方に適用されます。
- 突然の大量の血便を経験し、出血が続いている方。
- 出血によって貧血症状(立ちくらみやふらつき、動悸など)が現れている方。
- 内視鏡による治療後も、再出血を繰り返す方。
治療術式の選択
大腸憩室出血の内視鏡止血術では、出血の勢いや出血部位、憩室の位置など、患者様の状態を総合的に判断して最適な術式が選択されます。複数の手技を組み合わせることで、より確実な止血と再出血リスクの低減を目指します。
当クリニックで主に行われる内視鏡止血術の術式には、以下のようなものがあります。
クリップ法
- 適応: 大腸憩室出血の内視鏡止血術において、最も広く用いられる第一選択の手技です。
- 方法: 専用のクリップで、出血している血管やその周囲の粘膜を物理的に挟み、閉鎖することで止血します。
- 特徴: 熱を使わないため、組織への損傷や穿孔のリスクが低い、安全性の高い治療法です。
結紮術(EBL)
- 適応: クリップによる止血が困難な場合や、特定の憩室からの出血に対して有効とされています。
- 方法: 出血している憩室を内視鏡で吸引し、専用の器具で根元を結紮(しばる)することで止血します。
- 特徴: クリップ法に比べて、その後の動脈塞栓術や外科手術への移行率が低いと報告されています。
薬剤局所注入法
- 適応: 出血が激しく、物理的な処置が難しい場合の補助的な処置として用いられます。
- 方法: 血管を収縮させる薬剤を出血点周辺に注入し、一時的に血流を抑えることで、確実な止血を可能にします。
当クリニックでは、患者様の出血状況を精密に診断し、これらの手技の中から最も効果的で安全性の高い術式を選択または併用することで、確実な止血を目指します。
治療の詳細
麻酔・所要時間
大腸憩室出血の内視鏡止血術は、患者様の不安や苦痛を軽減するため、鎮静剤や鎮痛剤を使用します。これにより、ウトウトと眠っているような状態で治療を受けることができます。治療時間は通常30分から90分程度で完了します。
治療手順
- 術前準備: 検査前日に専用の検査食を召し上がり、大腸内を洗浄します。
- 内視鏡挿入: 鎮静剤投与後、肛門から内視鏡を慎重に挿入します。当クリニックでは、熟練した専門医が苦痛を軽減する技術を駆使します。
- 出血点の特定: 内視鏡で大腸全体を観察し、出血している憩室を特定します。
- 止血処置: 出血の状況に応じて最も適した術式を選択し、出血点を確実に把持・止血します。
- 止血確認: 止血が完了したことを、十分に確認して処置を終了します。
期待される効果
大腸憩室出血の内視鏡止血術によって、以下の効果が期待されます。
- 突然の大量出血(血便)の確実な停止。
- 出血によって生じる貧血症状の改善。
- 開腹手術を回避できることによる、身体的負担の軽減と早期の社会復帰。
- 再出血のリスクを低減し、安心して日常生活を送ることができる。
手術のリスクと合併症
大腸憩室出血の内視鏡止血術は安全性の高い治療ですが、ごくまれに以下のリスクや合併症が生じる可能性があります。
- 一般的なリスク: 治療後に出血が再発するリスク。
- 特有のリスク: 内視鏡操作によって大腸の壁に穴が開く穿孔(せんこう)のリスク。
- 再出血: 憩室は一度止血しても、再出血率が約40%と高いため、再発に注意が必要です。
当クリニックでは、熟練した専門医が高度な内視鏡技術と冷静な判断力で処置を行うことで、これらのリスクを最小限に抑えるよう尽力しています。万が一合併症が発生した場合でも、迅速な再処置や、連携する高次医療機関への速やかな紹介体制を整え、患者様の安全を最優先に考えています。