治療について
痔核根治手術について
痔核根治手術は、薬物療法や注射療法などの保存的治療では対応が困難な進行した痔核に対し、病変を根本から取り除くことで、確実な治癒を目指す唯一の治療法です。痔核は自然に治癒することがなく、また、症状が重度に進行した場合には、外科的な手術が最も有効かつ再発のリスクを抑える方法となります。
手術の適応(対象となる方)
痔核根治手術は、痔核が進行し、日常生活に大きな支障をきたしている方に検討される治療法です。特に、以下のような症状や状態がある場合に、手術が有効な選択肢となります。
手術適応の症状・状態
- 指で押し戻す必要がある、または押し戻しても戻らないIII度・IV度の内痔核
- 便器が真っ赤になるほどの大量の出血が続き、貧血が進行している場合
- 痔核が大きく、嵌頓(かんとん)痔核を繰り返すなど、日常生活に支障をきたしている場合
- 痔核の肥大化や硬化が進み、他の治療法では十分な効果が期待できない場合
- 硬化療法(ジオン注射)などの治療を受けたが、再発を繰り返している場合
手術術式の選択
痔核の治療法は、患者様の症状や痔核のタイプ、進行度によって最適なものが異なります。当クリニックでは、画一的な治療を行うのではなく、痔核を根本から治癒させることを第一に考え、患者様一人ひとりの状態に合わせて最も効果的で負担の少ない術式を提案します。
根治手術(切除術)と他の治療法との比較
痔核の治療には、根治手術である切除術の他に、注射療法やゴム輪結紮療法などの保存的治療法も存在します。これらの治療法は、比較的侵襲が少なく、日帰りや外来での治療が可能ですが、効果は一時的であったり、再発のリスクが高いという特徴があります 。
- 注射療法(ALTA療法、ジオン注射): 痔核に特殊な薬剤を注射して固める方法です。手術に比べて侵襲が低く、痛みや出血のリスクも少ないため、日帰り治療に適しているとされます 。しかし、痔核のタイプによっては再発率が手術より高いとの報告があり、外痔核には効果を発揮しない場合があります 。
- ゴム輪結紮療法: 痔核の根元を特殊なゴム輪で縛り、血流を止めて壊死させ、脱落させる方法です。主に軽度な内痔核に適用されますが、効果は一時的であり、再発しやすい傾向があります 。
- 薬物療法: 坐薬や軟膏、内服薬を使用し、痔核の炎症や痛みを緩和させる方法です。主に軽度な痔核や、手術前の症状緩和に用いられますが、根本的な治癒は期待できません 。
結紮切除術について
当クリニックの痔核根治手術の中心となるのが「結紮切除術」です。これは、痔核を切除する最も古典的で確実な手術法であり、痔核を根元から完全に切除し、再発を根本から防ぎます 。ジオン注射後に組織が硬化してしまったような、難易度の高い症例にも対応可能です 。
| 治療法 | 根治性 | 入院/通院 | 適応 |
| 結紮切除術 | 完全根治 | 7〜10日間入院 | III-IV度 |
| ジオン注射 | 3〜5年効果 | 日帰り | II-III度 |
| ゴム輪結紮 | 一時的 | 外来 | I-II度 |
| 薬物療法 | 症状緩和 | なし | I度・症状 |
当クリニックでは、患者様の症状や痔核のタイプ、進行度を総合的に判断し、必要に応じて複数の術式を組み合わせるなど、患者様一人ひとりに合わせた最適な治療法を提案します。
手術の詳細
痔核根治手術は、患者様が安心して治療を受けられるよう、万全の体制で実施されます。
麻酔・所要時間
- 麻酔方法: 原則として、入院治療の場合は腰椎麻酔で行います。これにより、手術中に痛みを感じることはなく、安全に手術を受けていただけます。痔核が軽度で1箇所のみの場合は、仙骨部硬膜外麻酔を用いて日帰り手術を行うこともあります 。
- 手術時間: 痔核の数や複雑さによって異なりますが、一般的には30分から90分程度です 。
手術・治療手順
手術は、以下の手順で慎重に進められます。
- 術前準備: 肛門周囲を清潔にし、手術部位を正確にデザインします。
- 麻酔導入: 腰椎麻酔を導入し、手術部位の感覚を完全に遮断します。
- 痔核の剥離・切除: 肛門括約筋から痔核組織(静脈瘤)を慎重に剥がし、切除します 。
- 止血・縫合: 痔核に向かう太い血管を確実に結紮して止血した後、切除を行います。創部を縫い閉じない方法(開放術式)と、奥半分だけを縫合する方法(半閉鎖法)があり、患者様の状態に応じて使い分けます 。
- 術後ケア: 術後には、医師と看護師が連携し、疼痛管理や創部のケア、排便管理を適切に行います。
入院・術後経過
痔核根治手術は、術後の安静と管理が非常に重要です。この期間をしっかり設けることで、回復を早め、合併症のリスクを最小限に抑えることができます。
- 入院期間: 痔核の数や状態にもよりますが、通常は7日から10日間程度の入院を推奨しています。これは、術後の合併症リスクを最小限に抑え、徹底した疼痛管理や排便管理を行うためです 。
- 術後経過:
- 入院中の管理: 手術翌日から普通食を摂取し、排便を促しながら治癒を目指します。痛みには消炎鎮痛剤を適切に使用して管理し、術後の出血や創部の状態をきめ細かく観察します 。
- 退院後の注意点: 退院後も、無理のない生活、創部の清潔保持、そして定期的な通院による経過観察が不可欠です。当クリニックでは、再診時のケアについても丁寧にご説明します。
当クリニックの入院環境
当クリニックには19床の入院設備があり、清潔で快適な入院病室(個室・多床室)をご用意しています。また、24時間体制の看護ケアにより、夜間や休日も安心して療養いただけます。
期待される効果
痔核根治手術によって、以下のような永続的な効果が期待できます。
- 痔核の完全な治癒と再発の防止
- 痛み、出血、脱出といった痔核による症状の根本的な解消
- 排便時の苦痛や不快感からの解放
- 肛門の形状と機能の改善による、日常生活の質の飛躍的な向上
手術のリスクと合併症
痔核根治手術は安全性の高い手術ですが、ごくまれに以下のリスクや合併症が生じる可能性があります。
- 一般的なリスク:
- 出血: 手術部位からの出血(下血)が起こる可能性があります。術後2〜3週間は注意が必要であり、約100人に1人程度の割合で再止血が必要となる場合があります 。
- 感染・疼痛: 術後の感染や痛みが起こる可能性はありますが、適切な管理と薬剤でコントロールが可能です 。
- 特有のリスク:
- 肛門の変形: 切除範囲が広すぎると肛門の変形をきたす可能性がありますが、適切なデザインに基づいた手術によって防ぐことが可能です 。
- 再発: 結紮切除術は痔核を根本から完全に切除するため、内痔核に関しては再発はほとんどありません 。
- リスク軽減への取り組み: 当クリニックでは、豊富な経験を持つ専門医が執刀し、術前には精密検査による正確な診断を行います。また、患者様の状態に応じた最適な術式を慎重に選択することで、リスクを最小限に抑えるよう最大限の努力をしています 。