Diseases

疾患について

大腸がん・大腸ポリープの症状

大腸がんや大腸ポリープは、早期の段階では自覚症状がほとんど現れないことが一般的です。これは、病変がまだ小さく、大腸の機能に影響を与えるほどではないためです。この自覚症状の欠如が、疾患の発見を遅らせる大きな要因となるため、症状がないからといって安心せず、定期的な検査を受けることが極めて重要となります。

病変がある程度の大きさに進行すると、さまざまな症状が現れ始めます。代表的なのは便の状態の変化です。

  • 便に血が混じる「血便」や、肉眼では確認できない微量の出血である「便潜血」
  • 便秘と下痢を交互に繰り返す、または便が細くなる
  • 排便後も便が残っているような感じ(残便感)がする
  • 腹部の痛みや張り、お腹にしこりを触れる

さらに、がんからの慢性的な出血が続くことで貧血が進行し、疲れやすさや息切れ、動悸といった全身症状として現れることも少なくありません。貧血の症状は一見、大腸とは無関係に思えるため、大腸がんの発見が遅れる原因となることがあります。これらの症状は、病変が進行している可能性を示しているため、一つでも該当する場合は速やかに医療機関を受診することが推奨されます。

大腸ポリープとがん

大腸ポリープ

その形からキノコのように茎のある「有茎性(ゆうけいせい)」、茎がなく平たい「広基性(こうきせい)」、その中間の「亜有茎性(あゆうけいせい)」に分類されます。

原因

大腸がん・大腸ポリープの発生には、生活習慣、遺伝、そして加齢など複数の要因が複雑に絡み合っています。これらの要因の中でも特に重要なのが、大腸がんの大部分が良性のポリープから発生するという事実です。このポリープが徐々に大きくなり、時間をかけてがんへと進行するプロセスは「腺腫-がん連鎖」として知られており、大腸がん予防の鍵を握る概念となります。

生活習慣による影響

高脂肪食や加工肉、赤肉の過剰な摂取は、大腸がんのリスクを高めることが指摘されています。これらの要因は日々の生活で改善が可能です。

  • 高脂肪食や加工肉、赤肉の過剰な摂取
  • 食物繊維の摂取不足
  • アルコールの過剰摂取
  • 喫煙
  • 肥満、運動不足

遺伝的要因

大腸がんの約20〜30%には家族歴が関与しているとされ、特に以下の特定の遺伝性疾患は、大腸がんの発症リスクを顕著に高めます。

  • 家族性大腸腺腫症(FAP): 大腸に100個以上のポリープが形成され、ほぼ100%の確率でがん化するとされています。
  • リンチ症候群: 若年での大腸がん発症リスクを高めます。

しかしながら、大腸がんの予防において最も重要なのは、良性ポリープの段階で発見し、切除することです。大腸ポリープの中でも、がん化する可能性のある「腺腫性ポリープ」は、その大きさに比例してがん化率が高まります。ポリープが5mmを超えるとがん細胞が含まれることがあり、2cm以上になると60%以上がん化するリスクがあるという研究結果も報告されています。したがって、症状がないうちから定期的に内視鏡検査を受け、ポリープの段階で摘み取ることが、将来の大腸がんを予防する最も確実な方法となります。

大腸がんのリスク要因と予防を以下の表にまとめます。

リスク要因予防
高脂肪食・加工肉・赤肉の過剰摂取バランスの取れた食生活, 食物繊維やカルシウムの摂取
飲酒・喫煙節酒・禁煙
肥満適度な運動
加齢・家族歴定期的な検査

診断

大腸がんの診断は、初期段階で病変を特定するための「スクリーニング検査」と、病変の有無や広がりを確定させるための「精密検査」の二段階に分かれます。

便潜血検査

スクリーニングとして最も広く用いられているのが、便潜血検査です。これは、便の中に含まれる微量の血液を検出する簡便な検査であり、食事制限などもなく手軽に受けることができます。しかし、便潜血検査はあくまでスクリーニングであり、陽性(要精密検査)であっても実際に大腸がんが発見されるのはごくわずかです。大半は痔などによる出血が原因ですが、精密検査を怠ると深刻な病気を見逃す可能性があるため、陽性となった場合は自己判断せず、必ず精密検査を受けることが求められます。また、便潜血検査は出血していないがんやポリープを見逃す可能性があるため、陰性でも安心せず、定期的に検査を受けることが重要です。

精密検査

精密検査の「ゴールドスタンダード」とされるのが、大腸内視鏡検査です。肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体を直接、詳細に観察することで、微小なポリープやがんも発見することが可能です。

  • 診断と治療の同時実施: がん化する前のポリープや、ごく早期のがんであれば、その場で切除することができ、将来の大腸がんを予防することに直結します。
  • 検査の流れ: 検査にあたっては、事前に腸管をきれいにするための下剤服用が必要となります。鎮静剤を使用することで、患者様の負担を軽減した状態で検査を実施することも可能です。

大腸がんの進行度や転移の有無を調べるためには、内視鏡検査のほかに「CT検査」や「MRI検査」、「腹部超音波検査」といった画像検査が行われます。これらの検査は、がんの広がりやリンパ節、他臓器への転移を確認するために不可欠です。また、「腫瘍マーカー検査」として血液中の特定の物質を測定することもありますが、これはあくまで補助的な検査であり、単独で確定診断を行うものではありません。

以下に、主な診断法をまとめます。

検査法目的特徴
便潜血検査40歳以上の方のスクリーニング非侵襲的で簡便。微量の出血を検出。陰性でもがんを否定はできないため、定期的な受診が重要。
大腸内視鏡検査精密検査・確定診断大腸全体を直接観察。病変の組織を採取(生検)し、その場でポリープ切除も可能。最も精度の高い検査法。
CT・MRI検査進行度や転移の確認がんの広がりやリンパ節・他臓器への転移を調べる。確定診断には組織検査が必要。

治療

大腸がん・大腸ポリープの治療法は、病変の種類や進行度、患者様の全身状態によって選択されます。早期発見されたポリープやがんは内視鏡で治療できることが多く、進行した場合は外科手術や薬物療法、放射線治療などを組み合わせて行うのが一般的です。

内視鏡治療

最も体への負担が少ない治療法は「内視鏡治療」です。これは、がんが腸壁の浅い層(粘膜内や粘膜下層のごく浅い部分)にとどまっている場合に適用されます。大腸ポリープの多くは無症状ですが、放置するとがん化する可能性のあるものがあります。疑わしいポリープを内視鏡的に切除することは、将来の大腸がんを予防する上で非常に効果的です。代表的な手法は以下の通りです。

  • 内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー): キノコのように茎があるポリープに対して、輪状のワイヤー(スネア)を茎にかけて締め付け、高周波電流で焼き切る手法です。
  • 内視鏡的粘膜切除術(EMR): 平坦なポリープや2cmよりも小さな病変に多く用いられる手法です。病変の下に生理食塩水などの薬液を注入してポリープを浮き上がらせてから、スネアで締め付けて切り取ります。
  • 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD): 大きな平坦な病変やEMRでは切除が難しい病変に対して行われる手法です。専用の電気メスで病変の周囲を少しずつ剥がして切り取ります。

内視鏡治療は、開腹手術に比べて体への負担が少なく、術後の回復が早いというメリットがあります。

手術について