Diseases
疾患について
肛門ポリープの症状
肛門ポリープは、肛門の歯状線付近に発生する、通常は良性の隆起物です。小さい場合はほとんど自覚症状がなく、人間ドックや他の肛門疾患の診察時に偶然発見されることも少なくありません 。しかし、ポリープが大きくなったり、複数発生したりすると、日常生活に影響を及ぼす様々な症状が現れることがあります 。
以下に、ポリープの成長に伴って現れる可能性のある主な症状を挙げます。
- 異物感や違和感: 肛門内に何かが挟まっているような感覚や、排便後に便が残っているような残便感を感じることがあります 。
- 脱出: 排便時のいきみなどによって、ポリープが肛門外に飛び出してくることがあります。手で押し戻すことができる場合もありますが、進行すると常に脱出したままになることもあります 。
- 出血や痛み: ポリープの表面が硬い便などで擦れると、少量の出血や、排便時に痛みを生じることがあります 。
- 便意の頻発: ポリープが発生する歯状線付近は、便意を感じる神経が集中しているため、ポリープが大きくなると、便がないのに便意を頻繁に感じることがあります 。
- かゆみ: ポリープが肛門外に出入りを繰り返すことで、肛門周辺の皮膚に刺激が加わり、かぶれやかゆみを引き起こすことがあります 。
これらの症状は、痔核(いぼ痔)や痔瘻(あな痔)といった他の肛門疾患と類似しているため、自己判断で市販薬を使用したり放置したりせず、専門医による正確な診断を受けることが重要です 。
原因
肛門ポリープは、肛門内部の歯状線と呼ばれる部分に繰り返される刺激や炎症が原因で形成されると考えられています 。特に、以下のような要因が複雑に絡み合って発生することが多いです。
- 慢性的な便通異常: 慢性的な便秘によって硬くなった便の通過は、肛門に強い物理的圧力をかけます。一方、慢性的な下痢は、肛門の組織に繰り返し刺激を与え、炎症を引き起こす主要な要因となります 。
- 他の肛門疾患の合併: 肛門ポリープは、他の肛門疾患と併発することが非常に多いです。特に、慢性裂肛(切れ痔)は最も関連が深く、裂肛の傷が治癒する過程で、その根元にポリープが形成されることがあります。このポリープは「見張りいぼ」とも呼ばれ、裂肛の存在を示す重要なサインとなります 。他にも、内痔核や痔瘻などの疾患による慢性的な炎症も、ポリープ形成の一因となります 。
このように、肛門ポリープは単独の疾患として発生するよりも、便通習慣の乱れや他の肛門疾患に起因する慢性的な炎症の結果として現れることが多い病気です。
診断
肛門ポリープの診断は、患者様の症状や既往歴を詳しくお伺いする問診から始まります。その後、以下の診察や検査を組み合わせて総合的に行われます 。
- 視診・触診: まず、肛門の周囲を観察し、腫れや脱出がないかを確認します。次に、医師が指を肛門内に挿入して、ポリープの有無、大きさ、硬さ、位置などを直接確認します。これにより、ポリープの基本的な情報を得ることができます 。
- 肛門鏡検査: 肛門鏡と呼ばれる短い筒状の器具を挿入し、肛門管の内部を直接観察します。これにより、触診だけでは確認できないポリープの形状や色、発生部位を正確に把握することができます。この検査は、肛門ポリープだけでなく、痔核や裂肛といった他の疾患の診断にも有用です 。
- 大腸内視鏡検査: 肛門ポリープが疑われる場合や、便潜血反応が陽性である場合には、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行うことがあります 。これは、肛門ポリープそのものの診断だけでなく、より重要な目的があります。肛門ポリープは良性でがん化する心配はほぼありませんが、直腸や大腸にできるポリープ(腺腫)は、放置すると将来的にがん化するリスクがあります 。また、「肛門ポリープだと思っていたものが、実は肛門がんだった」というケースも存在します 。そのため、見た目が似ているこれらの病気を確実に鑑別し、適切な治療方針を決定するために、大腸内視鏡検査は非常に重要です 。
患者様が抱える不安を解消し、最も適切な治療へ進むためには、専門医による正確な鑑別診断が不可欠です。
治療
肛門ポリープの治療は、ポリープの大きさや症状の有無、そして合併している他の肛門疾患によって決定されます 。痛みの程度や原因に応じて、複数のアプローチを組み合わせ、症状の軽減と根本原因の改善を目指します。
以下に、主な治療法を挙げます。
- 保存的治療: ポリープが小さく、自覚症状がまったくない場合は、すぐに治療を行う必要はなく、経過を観察することがあります。便通を整えるなど、根本原因となる生活習慣の改善指導を行います 。痛みやかゆみといった炎症症状が強い場合は、炎症を抑えるための軟膏や内服薬が処方されることもありますが、これらの薬はポリープそのものを小さくする効果はありません 。
- 外科的切除: ポリープが大きくなり、排便時の脱出や出血、異物感などの症状を引き起こしている場合、または慢性裂肛などの合併症がある場合には、外科的切除が根本的な治療法となります 。肛門ポリープ単独の場合は、局所麻酔による比較的簡単な切除術で、通常は日帰りで行うことが可能です 。
手術について→肛門ポリープの切除について - 他の肛門疾患の治療: 肛門ポリープが慢性裂肛に伴って発生している場合、ポリープだけを切除しても再発するリスクがあるため、裂肛の根治手術と同時にポリープも除去します 。