Diseases
疾患について
ホワイトヘッド肛門の症状
ホワイトヘッド肛門とは、かつて行われていた痔核手術(ホワイトヘッド法)の後遺症として生じる、慢性的な肛門の不調です。過去に手術を受けた方が、長年にわたり原因不明の不快感や痛みに悩まされている場合、この疾患が原因である可能性があります。
ホワイトヘッド肛門の主な症状は多岐にわたります。
- 粘液漏れと下着の汚れ: 肛門周囲が常にじめじめして不快感やかゆみを伴い、下着が汚れることがあります 。
- 粘膜の脱出: 排便時などに、直腸の粘膜が肛門から脱出する感覚(脱肛感)や異物感、違和感が生じます 。
- 出血: 脱出した粘膜が便と擦れるなどして傷つき、反復的な出血を引き起こすことがあります 。
- 肛門の痛みと狭窄: 手術による瘢痕(傷跡)が肛門を狭め、排便時に強い痛みを伴うことがあります 。
- 便失禁: 最も深刻な後遺症の一つとして、便をコントロールできなくなる便失禁に悩まされることがあります 。
これらの症状は、日常生活の質(QOL)を著しく低下させ、精神的な負担も大きくなるため、適切な診断と治療が重要となります。
原因
ホワイトヘッド肛門は、1990年代頃まで広く行われていた「ホワイトヘッド法」という痔核手術が原因で生じます。この手術は、痔核を肛門の全周にわたって徹底的に切除し、直腸の粘膜と肛門周囲の皮膚を直接縫い合わせるというものでした 。
肛門の機能は、手術によって大きく損なわれてしまいます。
- 肛門構造の破壊: 痔核は、単なる病変ではなく、便や粘液が漏れるのを防ぐ「ストッパー」としての役割を担う重要なクッション組織です 。ホワイトヘッド法では、この重要な組織を全周性に切除してしまうため、肛門の支持構造そのものが失われてしまいました 。
- 粘膜の下垂: 直腸粘膜は、肛門の皮膚に比べて強度が弱いため、支持組織を失った状態で強引に縫合されると、重力やいきみによって徐々に下垂していきます 。この粘膜の進行性の下垂が、粘液漏れや粘膜脱出を引き起こします。
- 肛門の狭窄: 広範囲にわたる切除と縫合によって、肛門周囲に硬い瘢痕組織が形成されることがあります。これにより、肛門の開口部が狭くなり、排便が困難になったり、強い痛みを伴ったりする原因となります 。
これらの要因が複合的に絡み合い、手術後数年から数十年という長い年月をかけて、様々な後遺症を引き起こします。
診断
ホワイトヘッド肛門の診断には、肛門疾患に関する専門的な知識と経験が不可欠です 。特に、過去の手術との関連性を正確に見極めることが重要です。
診断は、主に以下の方法を組み合わせて行います。
- 問診: 症状がいつから、どのような時に生じるかを詳しくお伺いします 。また、過去の肛門手術歴を丁寧に確認することで、ある程度の病気の予測を立てることが可能です。
- 視診と触診: 患者様に楽な体勢をとっていただき、肛門周囲の状態を肉眼で確認(視診)します 。その後、潤滑剤を塗った指で肛門内部を優しく触診し、狭窄の程度や瘢痕の有無、括約筋の状態などを調べます 。
- 肛門鏡検査: 肛門鏡という筒状の器具を用いて、肛門の内部を詳細に観察します 。これにより、肉眼では見えない粘膜の状態や縫合線などを確認することができます。
治療
ホワイトヘッド肛門は、過去の手術による肛門の構造的な欠陥が根本原因であるため、その治療は一般的な痔とは異なり、根本的な解決には外科的なアプローチが必要となる場合がほとんどです 。
- 保存的治療 保存的治療は、症状を和らげることを目的とした対症療法です。生活習慣の改善、温浴、排便習慣の調整、便通コントロールなどが行われます 。軽度の肛門痛や刺激症状には有効な場合がありますが、根本的な構造の問題を改善することはできません 。粘液漏れや粘膜脱出といった主要な症状は、保存的治療のみで完治することは困難です。
- 外科的治療 ホワイトヘッド肛門の外科的治療は、単に病変を切除するのではなく、破壊された肛門の構造を再構築する「修復手術」と呼ばれます 。手術では、脱出した粘膜を切除したり、本来の位置からずれた縫合線を剥離して肛門内に引き戻したりするなどの手技が用いられます 。この手術は、肛門が長年の瘢痕化により硬くなっているため、高度な専門知識と繊細な技術が求められます。
修復手術によって、粘液漏れや出血、粘膜脱出といった症状は劇的に改善する可能性があります 。ただし、元の手術によって既に重度の肛門括約筋や神経の損傷が及んでいる場合、便失禁のような重い症状は完全に改善しない可能性もあります 。