治療について
急性裂肛の用手拡張術について
用手拡張術は、特に強い肛門括約筋の緊張を伴う急性裂肛の患者様に対する、迅速かつ低侵襲な治療法です。肛門の過度な緊張が排便時の激しい痛みや傷の血行不良を引き起こすため、この治療によって根本的な改善を図ります 。目的は、裂肛の慢性化や複雑な病態への進行を防ぎ、患者様を排便時の苦痛から解放することです。
治療の適応(対象となる方)
治療適応の症状・状態
急性裂肛は、薬物療法など保存療法で治癒することが多い疾患です 。しかし、肛門括約筋の過度な緊張により、激しい痛みが繰り返され、治癒が妨げられるケースがあります 。用手拡張術は、以下のような場合に検討される効果的な選択肢です。
- 保存療法を行っても、排便時の激しい痛みが改善されない方
- 肛門括約筋が過度に緊張し、排便後も痛みが長時間続く方
- 肛門が硬く、軽度の狭窄を伴う方
- 症状が治癒と再発を繰り返し、日常生活に支障をきたしている方
手術術式の選択
当クリニックでは、患者様お一人おひとりの症状や肛門の状態を正確に診断した上で、最も適した治療法を慎重に選択します 。用手拡張術は、肛門括約筋の過度な緊張が主な原因である場合に有効な治療法ですが、症状の進行度や肛門の状態によっては、他の術式を組み合わせたり、選択したりすることもあります 。
用手肛門拡張術
- 適応: 軽度から中程度の肛門狭窄、または強い括約筋の緊張を伴う急性裂肛が対象となります 。特に、保存療法では痛みが改善しない場合に推奨されます 。
- 方法: 麻酔下で医師が指を使って肛門を穏やかに広げ、緊張している括約筋を物理的に緩めます 。
- 特徴: 切開を伴わないため体への負担が非常に少なく、術後の経過観察のため1日入院を基本としています。
その他の関連術式
当クリニックでは、急性裂肛の治療として用手拡張術を第一選択としますが、症状が慢性化している場合や、用手拡張術では効果が不十分な場合には、以下のより専門的な手術を提供しています。
側方皮下内括約筋切開術(LSIS)
- 適応: 用手拡張術では効果が不十分な場合や、括約筋の緊張が特に強く恒久的な弛緩が必要な場合に行われます 。
- 方法: 局所麻酔下でメスを用いて内括約筋の一部を皮下で慎重に切開し、緊張を恒久的に緩めます 。
- 特徴: わずか数分で完了する手術であり、より確実な肛門括約筋の弛緩効果が得られます 。
皮膚弁移動術(SSG)
- 適応: 裂肛が慢性化し、線維化や瘢痕化による重度の肛門狭窄を伴う場合が主な対象です 。肛門ポリープや見張りイボが併発している場合も適用されます 。
- 方法: 瘢痕化した組織を切除し、近くの健康な皮膚を移動させて傷口を覆い、肛門の狭窄を根本的に改善します 。
- 特徴: 肛門の狭まりを根本的に治癒させるための、より複雑な手術です 。重度の肛門狭窄に対しては、入院治療が必要になることがあります 。
皮膚弁移動術(SSG)の詳しいページはこちら
当クリニックでは、これらの選択肢の中から、患者様の病状やライフスタイルを考慮し、肛門機能の温存を重視した最適な治療計画を提案します 。
治療の詳細
麻酔・所要時間
用手拡張術は、通常、患者様の負担を最小限に抑えるために腰椎麻酔(下半身麻酔)または局所麻酔下で行われます 。手術時間は非常に短く、麻酔下で肛門を拡張するまでの時間はわずか数分から10分程度で終了します 。
治療手順
用手拡張術の主な手順は以下の通りです。
- 術前準備: 診察と精密な術前検査により、肛門の状態を正確に把握します。
- 麻酔導入: 手術室にて麻酔を担当する医師が麻酔を導入します 。
- 用手拡張: 麻酔が十分に効いた後、肛門の専門医が指で慎重に肛門を広げ、過度に緊張している括約筋を緩めます 。
- 止血・処置: 拡張後、必要に応じて軽微な止血処置などを行い、治療を完了します。
入院・術後経過
入院期間
用手拡張術の場合、術後の経過観察を十分に行うため、1日入院を基本としています。これは、術後の出血や痛みをしっかりと管理することで、より安全に治療を完了していただくためです。
術後経過
- 入院中の管理: 入院中は、痛みや出血の有無を定期的に確認し、適切な疼痛管理や排便の調節を行います 。
- 退院後の注意点: 退院後は、医師の指示に従い、創部の清潔を保つこと、規則正しい排便習慣を整えることなどが重要です 。定期的な通院で、長期的な肛門の健康をサポートします。
当クリニックの入院環境
当院では、患者様がリラックスして治療に専念できるよう、プライバシーに配慮した病室を完備しています 。経験豊富な看護師が24時間体制で常駐しており、術後のお困りごとや不安にいつでも対応できる万全のサポート体制を整えています 。
期待される効果
用手拡張術により、以下のような効果が期待できます。
- 肛門括約筋の緊張が緩和され、排便時や排便後の激しい痛みが劇的に改善する
- 肛門の血行が改善され、裂傷の治癒が促進される
- 便がスムーズに通過するようになり、再発の可能性が低減する
- 肛門狭窄の進行を防ぎ、慢性化を未然に防ぐ
- 痛みのストレスから解放され、日常生活の質が向上する
治療のリスクと合併症
用手拡張術は比較的リスクの少ない治療ですが、出血、感染、疼痛といった一般的なリスクが伴います 。ごく稀に、一時的な肛門機能の低下が生じ、一過性の便失禁を来す可能性がゼロではありません。術後には、麻酔が切れると鈍痛やヒリヒリとした痛みが一時的に生じることがあります 。当クリニックでは、術前の精密な診断と慎重な術式選択により、リスクの最小化に努めています 。