治療について
肛門ポリープの切除について
肛門ポリープは、肛門内部に発生する良性の増殖物で、性別や年齢を問わず認められます。多くは、慢性的な排便刺激や他の肛門疾患(慢性裂肛、痔核、痔瘻など)に伴う炎症が原因で形成されます。肛門ポリープそのものは、大腸ポリープと異なり、原則として悪性化してがんになることはありません。
しかし、ポリープが大きくなったり、排便時の刺激を繰り返し受けることで、痛みや出血といった症状を引き起こし、日常生活の質(QOL)を低下させることがあります。このような症状がある場合は、適切な治療が必要です。
手術の適応(対象となる方)
肛門ポリープの切除は、以下のような症状や状態がある場合に検討されます。
手術適応の症状・状態
- 排便時にポリープが肛門の外に飛び出してくる場合
- ポリープが原因で、排便時に痛みや出血が生じる場合
- 肛門に違和感や残便感がある、または肛門が塞がったような感覚がある場合
- 肛門ポリープが慢性裂肛(切れ痔)や痔核(いぼ痔)など、他の肛門疾患に伴って発生している場合
- ポリープが大きくなり、慢性的な便意やかゆみを引き起こしている場合
手術術式の選択
肛門ポリープの治療は、ポリープの大きさや症状、他の疾患の合併状況に応じて選択されます。当クリニックでは、患者様一人ひとりに最適な治療計画をご提案します。
ポリープ単独の場合
肛門ポリープのみが存在し、他の疾患を合併していない場合は、比較的簡単な外科的処置で切除が可能です。
- 適応: 症状がある場合、または患者様ご自身が切除を希望される場合。
- 方法: 局所麻酔を施し、ポリープを外科的に切除します。日帰りで対応可能です。
- 特徴: 不快な症状を迅速に解消できます。
根本的な原因疾患を伴う場合
肛門ポリープは慢性裂肛に伴って形成されることが多く、この場合はポリープのみを切除しても再発リスクが高まります。
- 適応: 慢性裂肛、痔核、痔瘻といった他の肛門疾患と合併している場合。
- 方法: 根本原因である疾患の根治手術と同時に、肛門ポリープを切除します。重症度によっては、腰椎麻酔を施し、数日間の入院を要する場合があります。
- 特徴: 複合的な問題を根本から解決し、再発リスクを低減できます。
手術の詳細
肛門ポリープの切除術は、安全で効果的な方法が選択されます。
麻酔・所要時間
- 麻酔方法: ポリープ単独の切除は局所麻酔下で行われます。他の疾患を伴う場合は、腰椎麻酔や静脈麻酔を併用することもあります。
- 手術時間: ポリープの数や大きさによりますが、簡単な処置であれば数分から10分程度、合併症の根治手術と併せる場合でも、通常は30分から90分程度が目安となります。
手術・治療手順
- 術前準備: 患部を十分に消毒します。
- 麻酔導入: 患部に局所麻酔などを注射します。
- 患部の処理: 肛門開創器を挿入し、ポリープや合併している疾患を切除します。
- 止血・縫合: 出血を十分に確認し、必要に応じて電気メスなどで止血します。溶ける糸で丁寧に縫合閉鎖します。
- 術後ケア: 術後の状態を確認し、必要な薬剤を処方します。
入院・術後経過
肛門ポリープ切除後の回復は比較的早く、多くの場合で日常生活に早期に戻ることが可能です。
入院期間
肛門ポリープ単独の切除であれば、ほとんどの場合で日帰り手術が可能です。しかし、ポリープが大きい場合や、慢性裂肛・痔核など他の疾患を伴う場合は、根治手術が必要となり、入院治療を要します。このような場合、術後の合併症(出血や感染)のリスクを考慮し、1日から7日程度の入院をお勧めしています。
退院後の注意点
退院後も、傷口が治癒するまでの間はいくつかの注意点を守っていただくことで、スムーズな回復を促すことができます。
- 仕事・運動: 事務作業などのデスクワークは手術翌日から復帰が可能ですが、腹圧がかかる力仕事や激しい運動は2〜3週間程度控える必要があります。
- 食事と飲酒: 消化の良いものを心がけ、辛子や唐辛子などの刺激物やアルコール類は、術後2〜3週間は控えましょう。
- 入浴: 手術当日はシャワーのみとし、翌日からは湯船に浸かることも可能です。
期待される効果
肛門ポリープの切除によって、以下のような効果が期待できます。
- ポリープの完全な治癒と、それに伴う出血や違和感といった不快な症状の解消。
- 合併している慢性裂肛や痔核の改善、または根本的な治癒。
- 肛門の健康状態を回復させ、日常生活の質の向上。
手術のリスクと合併症
肛門ポリープの切除術は安全性の高い治療法ですが、ごくまれに以下のようなリスクや合併症が生じる可能性があります。
- 一般的なリスク: 術後に出血、感染、疼痛が生じることがあります。術後1週間程度は排便時に少量の出血が認められることがありますが、これは傷口が治癒する過程で起こるもので、徐々に減少します。
- 稀な合併症: 大量出血や、ごくまれに腸に穴があく穿孔(せんこう)が起こる可能性があります。出血のリスクは約1%前後、穿孔のリスクは0.1%以下と報告されています。
リスク軽減への取り組み
当クリニックでは、これらのリスクを最小限に抑えるため、以下の取り組みを行っています。
- 術前の精密検査: 肛門鏡や大腸内視鏡検査を組み合わせ、ポリープの状態だけでなく、他の肛門疾患や大腸疾患の有無を正確に診断します。
- 個別化された術式の選択: 正確な診断に基づき、患者様の状態に合わせた最適な術式を慎重に選択します。
- 根本原因の治療: ポリープだけでなく、再発の要因となる慢性裂肛などの根本的な疾患の治療も同時に行うことで、長期的な健康維持を目指します。