Diseases

疾患について

パジェット病の症状

パジェット病は、汗を産生するアポクリン汗腺の細胞ががん化した皮膚がんの一種です 。この疾患は、アポクリン汗腺が主に分布する外陰部、肛門周囲、腋窩(わきの下)といったデリケートな部位に発生することが多く、60歳以上の高齢者によく見られます 。  

初期の症状は、平らな赤い斑点(紅斑)や、境界がはっきりしない皮膚の盛り上がりとして現れます 。この病変は見た目が湿疹や水虫(白癬)と非常に似ており、判別が難しいことが特徴です 。また、病変部には皮膚の色が白く抜けた脱色素斑や、茶色の斑点が混在することもあります 。  

多くの場合、初期の病変にはかゆみや痛みがほとんど伴いません 。このため、患者様は単なる湿疹と自己判断し、市販薬や塗り薬を試すことが少なくありません 。しかし、この疾患による病変は、薬を塗っても改善しなかったり、一時的に良くなっても再発を繰り返したりするため、徐々に拡大していきます。  

病状が進行すると、病変の表面がただれたり(びらん)、かさぶた(痂皮)が生じたり、皮膚が硬く盛り上がったしこり(結節)ができることもあります 。デリケートな部位に発生することや、症状が軽微であることから、医療機関の受診をためらう方も少なくありません 。しかし、病変は数ヶ月から数年単位でゆっくりと広がっていくため、発見が遅れると病変が広範囲に及んだり、リンパ節や他の臓器に転移し、命に関わる事態に至る可能性があるため、早期の発見と適切な診断が非常に重要となります 。  

原因

パジェット病のはっきりとした発症原因は、現時点ではまだ明確に解明されていません 。しかし、この病気は、汗を分泌するアポクリン汗腺の細胞ががん化することによって生じると考えられています 。  

がん化した細胞は、アポクリン汗腺が豊富に存在する外陰部、肛門周囲、腋窩(わきの下)の皮膚に広がり、病変を形成します 。発症は60歳以上の高齢者に多く見られるため、加齢に伴う細胞の変化などが影響している可能性が示唆されています 。  

一方で、この疾患は、膀胱、肛門、直腸など隣接する内臓のがんが皮膚に広がって生じる「続発性」のケースもまれに存在します 。特に肛門周囲に病変が見られる場合、直腸・肛門管のがんが皮膚に浸潤している可能性も考慮し、より詳細な検査が必要となります 。  

診断

パジェット病の診断は、初期段階では見た目だけで湿疹や他の皮膚疾患と区別することが非常に困難なため、複数の検査を組み合わせて慎重に行われます 。  

診断プロセスは、まず患者様の症状を詳しくお伺いする問診と、病変部の状態を観察する視診から始まります 。特に、「いつから」「どのような見た目で」「市販薬を塗っても治らないか」といった詳細な情報を確認することは、他の疾患との鑑別において重要な手がかりとなります 。  

次に、確定診断のために最も重要となるのが皮膚生検です 。この検査では、局所麻酔を行い、病変の一部を数ミリ程度採取して顕微鏡で詳細に調べます。これにより、パジェット細胞の有無を確認し、病名が確定されます 。皮膚生検は、単に病名を特定するだけでなく、病変が表皮内にとどまっているか、真皮にまで浸潤しているかといった病気の広がりを評価するためにも不可欠です 。  

さらに、確定診断後は、病変の広がりや他の臓器への転移がないかを調べるために画像検査が実施されます 。一般的には、リンパ節や内臓への転移の有無を確認するためにCT検査などが行われます 。特に肛門周囲に病変がある場合は、直腸や肛門管のがんが原因である可能性を鑑別するため、大腸内視鏡検査なども行われることがあります 。  

病変の境界が肉眼では不明瞭な場合、手術前に病変の広がりを正確に把握するために、マッピング生検という、病変の周囲を複数箇所生検する検査を行うこともあります 。これらの複合的な検査によって、病変の範囲や進行度を正確に診断し、治療方針が決定されます。  

治療

パジェット病の治療は、病変の進行度や患者様の全身状態に応じて、複数の選択肢の中から最も適切な方法が検討されます。  

がんがリンパ節や他の臓器に転移していない初期の段階では、外科的切除が治療の第一選択となります。この手術は、肉眼で見える病変の境界から1cmから3cmほど離して広範囲に切除することが原則とされており、これによりがん細胞の取り残しを防ぎます 。切除範囲が広い場合は、体の他の部位から皮膚を移植する「植皮術」や、周囲の皮膚を移動させる「皮弁術」といった再建手術が行われることもあります 。  

手術以外の治療法としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 放射線療法: 高齢者で合併症があり手術が困難な場合、あるいは再発や転移のリスクが高い場合、また、症状を和らげることを目的として、放射線療法が行われることがあります 。  
  • 化学療法: がんが広範囲に転移している進行期の場合には、抗がん剤による化学療法が選択されます。  

治療が完了した後も、パジェット病は同じ部位や他の部位に再発する可能性があるため、定期的な通院による経過観察が不可欠です 。再発や転移がないかを確認しながら、長期的に病気と向き合っていくことが重要となります。