Symptoms
症状について
気づかないうちに下着が汚れる・お尻が湿る
「下着が汚れる」「お尻が湿っている」という症状は、非常にデリケートな悩みであり、多くの方が他人に相談することを躊躇されます。しかし、この症状は医学的には「便失禁」や「粘液漏出」と呼ばれ、原因となる疾患を探るための重要な手がかりとなります。以下の症状に当てはまるものはありませんか?
- 少量の便やガスが、気づかないうちに下着に付着している
- 便意を感じてトイレに急いでも、間に合わず泥状の便や液状便が漏れてしまうことがある(切迫性便失禁)
- 粘り気のある透明または白っぽい分泌物が漏れて下着が湿る
- 特に排便後や入浴後に拭ききれなかったような少量の便が、時間が経ってから漏れる
- 肛門周りに湿疹やかゆみがあり、黄色っぽい滲出液や膿が下着に付いている
この症状が考えられる主な疾患
下着の汚れは、原因となる疾患によって、漏れるものの性状(便、粘液、膿)やメカニズムが大きく異なります。大腸肛門科および大腸内科の専門領域において、この症状が考えられる主な原因は、主に「肛門の構造的異常」「肛門括約筋の機能低下」「腸管の炎症や感染」の三つに分類されます。
1. 肛門の構造的異常による粘液漏出と便失禁
肛門の構造的な問題により、肛門管が完全に閉じられなくなる(シール機能の不全)と、直腸内に貯留した粘液や少量の便が漏れ出てきます。
- 痔核(いぼ痔)/直腸脱: 内痔核の進行(脱肛)や直腸脱により、肛門が完全に閉じなくなり、直腸内の粘液や便が漏れ出たり、過剰な粘液分泌が起こったりします。
- 直腸ポリープ/肛門ポリープ: ポリープが肛門の閉鎖を物理的に妨げたり、粘液の分泌を促したりすることが、下着を汚す原因となる可能性があります。
- ホワイトヘッド肛門: 過去の痔の手術によって肛門の皮膚が直腸粘膜で覆われ、粘液が常時外に出やすい状態になっていることがあります。
2. 肛門括約筋の機能低下による便失禁
便失禁は、肛門を締める筋肉(括約筋)の力が低下したり、直腸の感覚が鈍くなったりすることで、便やガスを抑えきれなくなる状態です。
- 加齢・出産・手術による括約筋損傷: 無意識に肛門を締める内肛門括約筋の機能が、加齢、自然分娩時の損傷、または痔瘻などの手術によって低下し、便やガスを抑えきれなくなる状態です。
- 直腸瘤(直腸腟壁弛緩症): 主に女性に見られる疾患で、直腸が腟側に膨らむことで排便時に便が完全に排出されず、残った便が漏れ出す原因となることがあります。
3. 炎症、感染、および大腸・直腸疾患
腸管全体の疾患や感染が原因で、粘液や液状便が大量に生成されたり、急激な排便衝動を引き起こしたりすることで、括約筋の制御を超えて漏出する場合があります。
- 痔瘻と肛門周囲膿瘍: 肛門周囲の細菌感染によりできた膿の通り道(瘻孔)から、膿や滲出液が継続的に排出され、下着を汚します。
- 炎症性腸疾患(IBD)/大腸がん・直腸がん: 潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性疾患や直腸のがんにより、粘膜が刺激され、多量の粘液や液状便が生成され、便失禁につながることがあります。
- 便秘症・過敏性腸症候群(IBS): 慢性の便秘で硬便を避け、周囲の液体便が漏れ出す溢流性失禁や、IBSの下痢型による急激な便意により、失禁が発生するケースです。
- 肛門周囲皮膚炎: 粘液漏れや軽微な便失禁などによって肛門周囲が常に湿潤し、生じた皮膚炎や湿疹から滲出液が出ること自体が、下着の汚れの原因となります。
これらの症状は、単なる衛生上の問題として放置されるべきではなく、進行した良性疾患、機能障害、あるいは生命に関わる悪性疾患(大腸がん)のサインである可能性も秘めています。ご自身で判断せず、専門医の診察を受けることが大切です。自己判断は、正確な診断を遅らせたり、適切な治療の機会を逃したりする可能性があります。