Symptoms
症状について
肛門や直腸の違和感
肛門や直腸の「違和感」は、非常に頻繁に聞かれる主訴ですが、その表現は痛みに比べて曖昧で、多くの方が単なる不快感として放置しがちです。しかし、この違和感こそが、早期の治療が必要な病態を教えてくれる重要なサインである場合があります。ご自身の症状がどのタイプに該当するかを正確に把握することが、早期の適切な診断につながります。
- 便を出した後も、お腹や肛門の奥に便が残っているような感覚が続く(残便感)
- 排便時や歩行時に、肛門から何かが飛び出している、または挟まっているような異物感がある
- 排便時に限らず、肛門の周りが常に腫れているような圧迫感や、ムズムズとした不快感が続く
- トイレで力んでも便がなかなか出てこず、指で肛門周囲や膣を押さなければ排便できない(用指排便)
- 排便後しばらく経っても、肛門が裂けるようなヒリヒリとした不快感が続く
- 明け方など、特定の時間帯に肛門の出口が強くかゆいと感じる
これらの違和感は、大きく分けて「便が残っていると感じる残便感」と、「物理的に何かが存在していると感じる異物感・圧迫感」の二つの系統に分類することができ、それぞれ異なる疾患の可能性を示唆しています。残便感は直腸の炎症や内部の病変による刺激が原因となることが多く、異物感は主に構造的な変化(脱出や腫れ)を示唆します。
この症状が考えられる主な疾患
肛門や直腸の「違和感」は、単なる疲れや冷えからくるものと思われがちですが、実際には、様々な肛門疾患、大腸疾患、機能性疾患の初期サインであることがあります。特に、違和感の内容(残便感なのか、異物感なのか)によって、考えられる病気の重症度や種類は大きく異なります。
違和感のタイプと主な原因疾患
| 違和感の具体的な表現 | 考えられる主な病態 | 代表的な原因疾患 |
| 残便感 (排便後も便が残る感覚) | 直腸内の占拠性病変(腫瘍/ポリープ)や粘膜の炎症、排便機能の異常 | 大腸がん・直腸がん、直腸ポリープ、炎症性腸疾患(IBD)、直腸瘤、過敏性腸症候群(IBS) |
| 異物感・脱出感 (何かが挟まっている、飛び出している感覚) | 肛門クッションや直腸壁の脱出、またはポリープの存在 | 痔核(いぼ痔)(特に脱肛を伴うもの)、直腸脱、肛門ポリープ、嵌頓痔核 |
| 持続的な圧迫感・不快感 (排便時以外も続く腫れや痛み) | 炎症、感染、または瘢痕形成による局所の変化 | 痔瘻・肛門周囲膿瘍、裂肛(慢性期)、肛門周囲皮膚炎 |
疾患別の詳細解説
構造的・物理的な原因による違和感(異物感・圧迫感)
- 痔核(いぼ痔)・嵌頓痔核 内痔核が進行して肛門の外に飛び出す状態(脱肛)になると、最も一般的な「異物感」の原因となります。脱出した痔核が戻らなくなり、激しい腫れと圧迫感を伴うのが嵌頓痔核です。
- 構造的排便障害(直腸瘤・直腸脱) 直腸壁が膨らんで便の排出を妨げる直腸瘤や、直腸全体が脱出する直腸脱は、「強い残便感」や「異物感」、排便時の用指排便といった症状を引き起こします。
- 裂肛(きれ痔) 硬い便などで肛門の皮膚が裂ける病気です。慢性化して肛門が狭くなると、排便後の「ヒリヒリとした不快感」や「狭窄感」という違和感に変わることがあります。
- 痔瘻と肛門周囲膿瘍 細菌感染により肛門周囲に膿が溜まる(肛門周囲膿瘍)と「強い圧迫感」が生じ、さらに痔瘻化すると、膿の排出による慢性的な「不快感」が続きます。
内科的・炎症性な原因による違和感(残便感)
- 大腸がん・直腸がん・大腸ポリープ 直腸内の腫瘍(がんやポリープ)が成長し、腸管を刺激・狭窄させることで、「残便感」や「便が細くなる」といった深刻な違和感を引き起こします。
- 炎症性腸疾患(IBD) 潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸粘膜の慢性的な炎症が、下痢や血便とともに直腸を刺激し、「持続的な残便感」の原因となります。
- 機能性疾患(過敏性腸症候群・便秘症) 腸の機能異常である過敏性腸症候群(IBS)や、硬い便が直腸に溜まる重度の便秘症は、器質的な異常がなくとも「機能性の残便感」や不快感を引き起こすことがあります。
これらの症状は、ご自身で判断せず、専門医の診察を受けることが大切です。特に、残便感が持続したり、違和感に加え出血や体重減少、便が細くなるなどの症状を伴う場合は、大腸内視鏡検査による精密な診断が必要です。